アートは私たちの心に深く訴え、感情を表現する素晴らしい手段です。
特に、発達障害のある子どもたちにとって、アートは感情を整理し、自己表現を助ける重要なツールとなります。
この記事では、アートが発達障害の子どもたちにどのような影響を与えるか、そして、アートが子どもたちの感情の整理にどのように役立つかやその為の方法などをお伝えします。
アートを通じて、新しいコミュニケーションの形を見つけ、自分の感情や考えを表現できるようになりますので、ぜひ日常に取り入れてみてください。
もしかしてグレーゾーン?気になる発達障害の「絵の特徴」
発達障害を持つお子様は「絵画」においても個性が光る作品を作る場合が多く、いくつかの特徴が見られます。
ここでは発達障害を持つお子様の「絵画」の特徴を知的障害、学習障害、自閉症スペクトラム障害のに分けて紹介します。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
細部への注意 | ASDの子どもたちは、細部に非常に注意を払います。細かい部分が丁寧に表現されていることが多くあります。 |
独特な色の使用 | 独特な色の選択や組み合わせが見られることがあります。 |
反復的なパターン | 反復的なパターンや形を描くことが多く見られます。 |
具象的な描写 | 抽象的な概念や表現が少なく、具象的な描写が多いです。 |
感情表現 | 感情の表現が多い、逆に少ないなど極端なケースもあります。 |
注意欠如・多動性障害(ADHD)
活動性の高さ | 活動性が高く、動きのあるシーンが描かれることがあります。円や線もダイナミックで画用紙全体を使います。 |
絵の進捗 | 長時間に及ぶ活動だと集中力が切れてしまい、絵が未完成であったり、細部が省略されていることがあります。 |
色の使用の過剰 | 多くの色を使用することがあります。 |
知的障害
発達過程 | 絵画の発達過程がゆっくりです。 形や比例がのバランスが歪むこともあります。 |
全体像 | 物事がバラバラに描かれ、全体としての一貫性がない場合があります。 |
色の使用の制約 | 色の選択が限定され、多くの色は使いません。2色使いが多いことも特徴の一つです。 |
このような特徴が見られる場合もありますが、一方でまるで大人のような画力や繊細な絵を描くケースなども稀にあります。
次は、参考として知っておきたいお子様の絵画の発達過程を紹介します。
参考にしたい!絵の発達過程
絵の発達過程には個人差があり、絵を描くことの経験の量も大きく影響します。
そのため同年代のお友達との絵を比較して心配になる必要はありません。
特には発達障害を持つお子様の場合はゆっくりと学んでいく傾向もあるので、絵画の発達過程についても思い悩まずまずは楽しむことから始めましょう。
なぐりがきの時期 | 子どもは紙に描くことに興味を持ちます。 手の動きの軌跡としてくるぐるとした線を繰り返し描きます。 |
象徴期 | 子どもは線に意味を持たせるようになります。次第にイメージから線を書くようになり意味を持つ線が形成されます。 |
前図式期 | 円が描けるようになります。同心円や画用紙に丸を敷き詰めたようなマンダラなどを描き始めます。 |
図式期 | 地面を見立てた線を描き、そこを起点として木や家などを並べるように描きます。 |
楽しみながら絵を描くことで、だんだんと絵に対する自信が持てるようになります。
次は発達障害を持つお子様が「アート」を生活に取り入れることで起こる嬉しい効果についてお伝えします。
発達障害のお子様が「アート」で得られる嬉しい効果
発達障害の子どもたちは、感情を言葉で表現するのが難しいことがあります。
しかし、絵画や工作などのアートは、感情や思考を視覚的に表現することができ内面の世界を理解する窓となります。
発達障害とアートは相性が良い!
アート活動は、発達障害の子どもたちの感情の整理や表現に大きな効果をもたらします。
ここでは発達障害を持つお子様が「絵画工作」を通して得られるメリットについてお伝えします。
1:感情の表現と整理
アート活動を通じて、子どもたちは自分の感情を表現し、整理することができます。これにより、ストレスの軽減や自己理解の向上が期待できます。
また、アートはリラクゼーション効果があり、心の平穏や安定をもたらします。
2:自己肯定感の向上
アートを通じて何かを創り出すことで、子どもたちは自分に自信を持つことができます。これが自己肯定感の向上につながります。
3:コミュニケーションスキルの向上
アート活動は、子どもたちが他人と協力したり、自分の考えを表現したりする機会を提供します。これにより、コミュニケーションスキルが向上する可能性があります。
4:集中力と注意力の向上
絵を描いたり、工作をしたりすることで、子どもたちは一つのタスクに集中することを学びます。これが集中力や注意力の向上に役立ちます。
5:手先の器用さや創造性の向上
絵を描くことや工作活動は、細かい手の動きを必要とします。これにより、手先の器用さが鍛えられます。
またアート活動は、創造性を刺激します。新しいアイデアを考え、それを形にすることで、創造性が育成されます。
このような嬉しい効果だらけの工作ですが、工作や絵画が嫌いという発達障害を持つお子様の声もちらほらと聞くことがあります。
なぜ、発達障害を持つお子様がアート活動に苦手意識を持ちやすいのかお伝えします。
工作が苦手な子どもたちの特徴と心理
先ほどは「絵画工作」が好きなお子様のケースを紹介しましたが
発達障害の子どもたちの中には、「絵画工作」に苦手意識を持ち嫌いになってしまうお子様も多くいます。
また、「工作は好きだけど絵は嫌い」「糊を使う活動は嫌い」などお子様によっても様々なケースが見られます。
しかし、アートを通じて感情を表現し、自己表現の手段として利用することで、工作が苦手な子どもたちも楽しみながら学ぶことができます。
発達障害の子どもが「工作」を苦手とする理由
ここでは、工作に苦手意識を持ってしまう発達障害のお子様の理由を紹介します。
発達障害の子どもたちは、手先が不器用で、物を見る時に全体ではなく部分から入ってくるため、工作が苦手になりがちです。
特に、絵を描くことにおいては、細かい部分を描くのが得意でも、全体のバランスを取るのが難しいことがあります。
指先をうまく使えない
発達障害の子どもたちは、手に分厚い手袋をはめているような不便さを感じることがあります。
そのため、筆圧が弱かったり、真っすぐな線が書けなかったりします。しかし、トレーニングと練習によって、これらの困難は克服できます。
色鉛筆など指先の力が必要な画材は避けて、弱い力でも色がしっかり乗るクレパスやサインペンなども試してみてください。
物の見方の違い
発達障害の子どもたちは、物を見る時に全体ではなく部分から入ってくるため、絵を描く際にも全体のバランスを掴みにくい特徴があります。
しかし、この特性は、細かい部分を丁寧に描く強みにもなります。
集団の中で「絵画工作」を行うことで物の見方の違いから、周りの子とちと同じようにできないことに悩んでしまう場合もありますが「絵画工作」において上手に描くことよりも工程を楽しむことが大切です。
どうしてもお子様が気になってしまう場合は、お家や他のお友達がいないパーソナルな空間でのびのびと「絵画工作」を行うのも良いでしょう。
個性が輝く絵は素晴らしいものです。
絵を描くのが好きになれば、絵を描くのが苦手な子どもたちも、ゆっくりでも確実に上達していくでしょう。
好きなものを描くことで、絵を描く楽しさを知り、自然と上達します。
「工作嫌い」なお子様への指導方法のポイント
1. 安心感を与える
工作が苦手な子どもたちには、まず安心感を与えることが大切です。子どもたちが安心できる環境を作り、自由に表現できる空間を提供しましょう。大人がサポートし、子どもたちのペースに合わせて進めていくことで、工作活動が楽しくなります。
2. シンプルな材料を選ぶ
複雑な材料や道具は、工作嫌いな子どもたちにとってハードルが高くなります。シンプルで使いやすい材料を選び、子どもたちが自分で作業できるようにしましょう。これにより、子どもたちの自信がつき、工作への興味がわきます。
3. インストラクションを明確に
工作嫌いな子どもたちには、明確でわかりやすいインストラクションが必要です。子どもたちが迷わないように、一つ一つのステップを丁寧に指導します。
4. 励まし
子どもたちが工作活動に取り組む際、励ましの言葉やポジティブなフィードバックは大切です。子どもたちの努力を褒め、小さな成功を祝いましょう。
これによって、子どもたちのやる気が上がり工作活動への抵抗が減ります。
5. 子どもたちの意見を尊重
子どもたちのアイデアや意見を尊重し、一緒に考え、作り上げていくことが重要です。子どもたちの創造性を大切にし、自分の意見を表現できる機会を提供しましょう。
これによって、子どもたちの表現力が豊かになり、工作活動がより楽しいものとなります。
このような段階を踏むことで、工作や絵画に苦手意識を持つお子様でも
意欲的に取り組むことができます。
下の記事では、お子様の年齢による絵画工作の発達段階とアプローチ方法を紹介しています。
こちらも合わせて参考にして頂ければ幸いです。
やっぱり楽しい!絵画工作
先ほどは「絵画工作」が苦手なお子様の話をしましたが、発達障害を持つお子様たちの中には、「絵画工作」が大好きな子もたくさんいます。
言葉での表現が難しいお子様たちは、絵画や工作を通じて、心の中の思いや感情を自由に表現できるからかもしれません。
しかし、テーマや材料が限定されていたり、周囲の期待やプレッシャーがあると、お子様たちはストレスを感じてしまい、「絵画工作」が苦手だと感じてしまうこともあります。
だからこそ、ご自宅でお子様が「絵画工作」を楽しむためには、お子様が好きな時間に没頭できる環境を作り、周囲の大人たちの理解とサポートが大切です。
発達障害を持つお子様たちの絵は、それぞれの個性が輝く素晴らしい作品ばかり。お子様の大きな才能や好きなことを追求できるような環境を整え、温かく見守っていきましょう。
さらに才能を伸ばしたい!といった場合にはアート教室など、お子様の特徴を理解してくれる先生を探してみてください。
『アートセラピー』は発達障害の子どもに最適!
アートセラピーは、アートを取り入れた心理療法です。
子供から大人まで幅広い年齢層から受け入れられており。お子様のカウンセリング手段として楽しみながら取り組めることがら採用されることも多い手段です。
言葉だけではないコミュニケーションになるので、特に発達障害を持つお子様にもおすすめです。
ここでは発達障害を持つお子様に「アートセラピー」がおすすめな理由を紹介します。
発達障害×アートセラピーは最強?
セラピーやカウンセリングに抵抗があるお子様も「アート」を通すことで通うことが楽しみになります。
また、製作を通すことでセラピストと信頼関係を築きやすく一緒にアート制作を行うことで、子供たちは安心感や達成感を感じます。
『アートセラピー』をおすすめする理由
言葉で話せなくても大丈夫
アートセラピーでは、言葉を使わずに絵や他のアート制作を通じて気持ちを表現できます。
言葉で気持ちを上手く説明できないお子様にとってリラックスできる時間となりストレスの軽減が期待できます。
問題の体現化・外的化ができる
アート制作を通じて、子供たちは自分の気持ちを具現化し、形に残すことができます。これにより、気持ちの整理がしやすくなります。
身体の様々な感覚を使うこと
アートセラピーでは、体を使った動作が必要になり、これが気持ちを落ち着ける要素を持ちます。
また、特に自閉症スペクトラム障害のお子様にとって、視覚情報を受け入れやすいという利点があります。
アートセラピーでお子様が作った作品は形に残るので、それがお子様に大きな達成感を与えてくれますね。
この作品を通して、お子様の自己肯定感も育まれるでしょう。お子様の作品をみんなで褒めてあげることで、お子様は更に自信を持つことができます。
また、作品を家で飾ったり、親戚や友人に見せることで、お子様は周りの人たちとのコミュニケーションのきっかけを持つことができます。
これにより、お子様は認められる喜びを感じ、達成感や自己肯定感が一層深まるでしょう。
お子様がアートを通じて心の成長を遂げられるよう、温かく見守っていきましょう。
まとめ|アートと心の成長
アートは、発達障害を持つお子様たちにとって、心の安らぎと表現の場となります。
また、アート活動は、お子様たちがコミュニケーションをとるきっかけを作り出します。これによってさらに家族や友人との絆が深まる効果も期待できます。
お子様の興味や才能を大切にし、成長を温かく見守っていきたいですね。
HOKETでは、アートを通じてお子様の心にアプローチをし、お子様の心の中にある思いや感情を整理するオンラインサービス「HOKETラボパーソナル」を行っています。
アートを通じて、お子様自身が自分自身に向き合い、新たな自己理解や表現の道を見つけることができます。
興味があれば、ぜひ一度ご利用いただき、お子様の心の成長をサポートさせていただければと思います。