子どもたちの成長は、言葉や行動だけでなく、アートを通しても表れます。
そしてアートのひとつである絵画工作の活動は、子どもの感情や思考、想像力を豊かにしコミュニケーションの手段ともなります。
子どもたちがどのようにアートを通して成長していくのか、そのポイントと共に、周りの大人がどうサポートしていけば良いのかをこの記事では紹介します。
また、さまざまな年齢そして特別なニーズを持つ子どもたちの特徴を知り、寄り添ったアート活動のヒントを一緒に考えていきましょう。
【0歳~2歳】コミュニケーションツールとしての絵画工作
0歳~2歳の子どもは心身の発達が大きくみられる時期です。
絵画工作においてもできることや楽しめる内容は、どんどん変化していきます。
この時期の子どもに共通して言えることは、絵画工作は大人とのコミュニケーションのツールであることです。
作ることを通してポジティブな言葉をかけ、制作活動のやる気を培いましょう!
ここでは0歳~2歳の絵画工作のポイントと活動と、オススメの活動について紹介します。
握ることから始める
まずはいろいろな素材を使い、触って握ることから始めましょう
水や粘土、紙、絵の具など好きな感触と不快な感触があることに気づきます。
そして、クレヨンを握ることができるようになると画用紙に無秩序にぐるぐると、線を描き始めるお絵描きの活動ができるようになります。
指先を使う
「物をつかむ」「移動させる」などの基本的な動作を通じて、手や指のトレーニングを行います。
そして、指先の動きが上手になると、シールを貼る作業ができるようになります。
ぺたぺたするシールの糊部分の感触が好きな子どもも多いので、シールを使ったアート活動は取り入れやすくておすすめです。
初めてのアート体験!0歳~2歳にオススメのアート
ここではこの時期のお子様にオススメのアート活動の例を紹介します。
手や足でのペインティング:
絵の具やスタンプを手足にペインティングし、インクの感触を楽しみます。手足についた絵の具は画用紙にスタンプすることで思い出の作品として残すこともできることからこの時期によく取り入れられるアートです。
無秩序な塗り絵:
この時期の塗り絵はクレヨンを使った点打ちや、ぐるぐる描きなどでOKです!
クレヨンを握り絵を描く感覚を楽しみます。
この時にクレヨンはなるべく柔らかく、しっかりと色のつくものを選ぶことがオススメです。
【3歳~4歳】アートを通して自己表現をする
3歳~4歳の子どもたちは、一段と成長し自己表現や想像力が豊かになる時期で
アート活動にも意欲的になり、意味を持つ形を描いたり作ったりするようになります。
また、この意欲的な時期にさまざまな材料でのアートや技術を経験することで子どもたちの更なる制作意欲の向上や、想像力を育むことに繋がります。
意味ある形の描画
絵画工作を通じて基本的な形や顔、シンボルとなる形を描くようになります。
また、自分自身や友達、家族など身近な人物を描くことが多いのも特徴の1つです。
リアルな体験をアートに織り交ぜ、自分たちの感じたことや学んだことを視覚的に表現することも可能です。
アートとコミュニケーション
3歳〜4歳は人との関わりがアートの中で豊かに表現される時期です。
この年齢の子どもたちは、自分たちの作品のフィードバックを通じて、自分自身をより深く理解し始めます。
描いた絵や作った工作の作品を親や友達と共有し、他の人からのフィードバックや反応を楽しみます。
たくさんポジティブな言葉で肯定してあげる時が、制作意欲や成長に繋がります。
どんな活動が最適?オススメの絵画工作メニュー
この時期の子どもに是非取り組んでもらいたいテーマを選びました。
少しずつ取り組む内容の難しさをUPさせたり、材料を工夫するなど子どもの興味を惹く活動がおすすめです。
テーマを設定したシンプルな描画:
なにを描けば良いかがわからないといった子がまだ多い時期です。
子どもにとって身近な存在の家族や友達をテーマに設定することでイメージがしやすく、抵抗なく取り組むことができます。
身近な素材を使った工作:
紙皿や牛乳パックなどのお家で手軽に手に入れることのできる材料を使って作る工作は、材料の手軽さから思うがままに切ったり貼ったり自己表現を楽しむことができます。
また作品は子どもにとって愛着が湧くものともなります。
【5歳~6歳】現実と空想の交差点
5歳~6歳の時期は、想像力が豊かになり自分の感情や考えを表現する能力が増してきます。
アート活動においても、自己表現と創造性が発展し作品に個性が現れます。
ここでは、5歳~6歳の子どもの絵画工作の特徴と、効果的なアートの取り入れ方についてお伝えします。
想像力あふれるアート作品
5歳~6歳の子どもは意味ある形の描画が一層発展し、具体的な表現が増えます。
身の回りの人だけでなく、ペット、家、自然など、身の回りのものを描きます。また絵には自分たちが日々経験している環境や感情を反映する場合が多いです。
空想の表現
5歳〜6歳の子どもたちは、絵画工作を通じて、現実世界だけでなく空想の表現も楽しみます。
自らの想像力を活かして、ファンタジーな場所や生き物を生み出し、紙現実の世界と混ぜた絵として表現します。
絵画工作アイデア!アートを通してコミュニケーションを取る
この時期には子ども自ら取り組みたい課題やテーマの意見を伝えてくれる場合もあります。
子どもの意見も摂り入れながら、アート活動の中に新しい学びを提供してください。
紙芝居や絵本作り:
空想の世界を表現できるようになったこの時期には、アートを通して物語を作る活動がオススメです。
描いた絵を言葉にして伝える経験を積むことで、言語化能力や考える力が豊かになります。
共同制作:
この時期には周りの友達と協力してアート作品を作り上げることが可能になります。
作品の完成イメージを共通して取り組む過程では、コミュニケーション能力の工場や協調性が養われます。
また1人で作る作品とは違い、ダイナミックな作品となるので達成感も味わえることでしょう。
【7歳~8歳】技術とスキルの発展
自分のアイデアを表現するのに多くの方法を探求し、アートを通じて感情や考えを伝えることができるようになります。
またこの時期から、作品の完成をイメージしてから計画的に製作をするようになるのも特徴の1つでしょう。
ここでは、そんな7歳~8歳の時期の子どもの特徴と、取り組んで欲しいおすすめの活動を紹介します。
技術の向上
基本的な色を混ぜ合わせて新しい色を作り出す方法を理解し、色を使って雰囲気を表現する方法も学びます。
また、絵に細かい表現が出てくるのもこの時期で物語やメッセージが表現されます。
例えば、人物の表情や洋服、背景の小物など、細部にわたる表現が豊かになります。
試していきたい!アート活動
この時期には子どもに特におすすめの活動をまとめました。
複雑な製作も少しずつチャレンジして、可能性を広げて行きたいですね!
モザイクアート:
作品の完成をイメージしてから取り組むことができるようになるので
「モザイクアート」など、制作途中にイメージか難しいテーマであっても完成目指して楽しく取り組むことができるようになります。
立体アート:
表現の幅が広がる時期なのでペーパークラフトで「紙飛行機」を作ったり、簡単なプラスチック製のプラモデルを作るなど、高度な立体の作品に挑戦できます。
【9歳~10歳】個性とスタイルの発展
9歳~10歳ごろの子どもは自己表現、技術的なスキルがさらに向上します。
今までの経験を応用し作品に活かしたり、自分のスタイルを確立し絵画や工作の作品を作るようになります。
ここではそんな、9歳~10歳ごろの子どもの絵画工作の発達の特徴や、さらに可能性を伸ばすためにできるアート活動について紹介します。
個性の発見
完成した作品に対して自分で改善点やうまくいった点を考えて、次回以降に反映する工夫や応用力が上がります。
これによって自分のアートスタイルができ、統一されたタッチの絵を描くようになります。
リアルな表現
より複雑で詳細な描写をするようになります。
また、作品をより正確に反映し始め、特定の人物を描く際には特徴や表情も表現するようになります。
アートの幅を広げるアイディア
この時期には子どもにぜひ取り組んでもらいたいおすすめの活動をまとめました。
これまでの「工作」の域から「美術」に移行する準備段階の時期でもある為、より知識や技術が必要な活動を取り入れてください。
アート×科学:
アートに実験的な要素を追加する事で、科学の原理を理解し面白さを知る機会となります。
アート×科学の例としては、スライム作りなどもオススメです。
スケッチブックの使用:
技術面の発達が大きいこの時期にはお絵描きから一歩進んで、スケッチにチャレンジしてみることもオススメです。
スケッチブックを使用して黒鉛筆のみで描く絵は新しいアートの経験となり、高学年から始まるデッサンの練習にもなります。
ここまでは年齢ごとの絵画工作の発達過程と、そのアプローチ方法を紹介しました。ここからは特別なサポートが必要とされる「発達障害」と「不登校」の子どもに焦点を当てて、それぞれアートを通して行うアプローチ方法をお伝えします。
【発達障害】自分を表現するためのアート
発達障害を持つ子どもたちにとって、絵画工作などのアートは自己表現の手段であり、感情をコントロールや、コミュニケーションのトレーニングとしても取り入れることができます。
また、アート活動はお子様の自己肯定感を高め、ものづくりをする楽しさを生み出します。
ここでは、発達障害を持つ子どもにオススメのアートの取り入れ方をまとめました。
自由な表現を認める
発達障害には自閉症やADHDなど様々な種類があります。
その特性や子どもたちそれぞれが持つ、個性に合わせたテーマ選定が非常に大切です。
設定したテーマから逸れていても指摘せずに作品を認めましょう。
安心と安全が確保できる空間で楽しむ
ものが多い空間や初めての場所に大きなストレスを感じる場合があります。
大きなストレスがかかった状態でのアート活動は、効果を十分に得られないだけではなくアートそのものを苦手と感じてしまう場合があるので気をつける必要があります。
もし、分離不安が発生した場合は活動に慣れるまでお家の方と一緒にアートを楽しむこともおすすめです。
アートを通したコミュニケーションを楽しむ
自分の気持ちをうまく話せない子どもや、感情をコントロールできない子どもにとってアートは形や色で気持ちを表現できるツールになります。
作品を作るに至ったストーリーを共有することで、アートを通して感情や気持ちを周りの人に伝えることができます。
また作品についての話をする時間が、コミュニケーションのトレーニングにもなるでしょう。
下の記事では発達障害を持つお子様の絵の特徴や、アプローチ方法、また感情整理に効果的なアートセラピーについて紹介しています。
発達障害を持つお子様のアートでの支援の参考になりますので、是非チェックしてみてください。
次は不登校の状態のお子様におすすめのアートを通したアプローチ方法をお伝えします。
【不登校】アートを通した自己肯定感の回復
アートは表現の手段であり、感情を整理し、ストレスを軽減するツールとなることがあります。
ここでは、不登校の状態になっている子どもにオススメのアートの取り入れ方をまとめました。
自己探究のサポートとして取り入れる
不登校の子どもにとって、絵画工作は単なるアートとしての活動以上の意義を持つことがあります。
特に、自己探究のサポートとして取り入れることで、自分自身を理解し、表現する手段を得ることができます。
また、作品を通して親やサポートを行う大人とのコミュニケーションの材料ともなり、子どもたちの内面に寄り添う手がかりを得ることができます。
リラックスできるテーマの活動をする
心の内に寄り添い、リラックスできる空間を提供することが重要です。またリラックスできるテーマの活動をすることで、子どもたちは安心感を得ながら、自己表現の場を持つことができます。
例えば、自分の好きな動物を描いたり、夢中になっているアニメキャラクターを作ったりすることで、心から楽しむことができます。
下の記事では、不登校の状態にあるお子様へ向けてアートを通して支援する方法を詳しく紹介しています。
お子様の心のケアをしたい方や、今の状況を変えたい方は参考にして頂ければ幸いです。
まとめ|子どものアート活動と大人の役割
子どもたちのアート活動を通じた成長は、技術の向上だけでなく、感情表現やコミュニケーション能力、想像力の拡充にも繋がります。
そして、周りの大人が適切なアート活動のテーマを提供することで、子どもたちは自分自身を表現し、さらなる成長へとステップアップしていきます。
アートを通じて子どもたちの無限の可能性を引き出し、一緒に楽しみながら成長をサポートしていきましょう!