子どもの成長は、言葉や行動だけでなく、アート活動を通じても表れます。絵を描いたり工作をすることで、感情や思考、想像力が豊かになり、自己表現やコミュニケーションの手段にもなるのです。
この連載では、「子どもの成長を支えるアートの力」をテーマに、年齢ごとの特徴や特別なニーズを持つ子どもたちへのアプローチ方法を全3回にわたってお届けします。
初回となる今回は、「年齢別アート活動の発達段階」をテーマに、0歳から10歳までの子どもたちがどのようにアートを通して成長するのか、そのポイントを詳しく解説。さらに、周りの大人がどうサポートしていけばよいのか、具体的なヒントも紹介します。
子どもたちの可能性を引き出すためのヒントが満載ですので、ぜひ参考にしてください!
【0歳~2歳】コミュニケーションツールとしての絵画工作
0歳~2歳の子どもは心身の発達が大きくみられる時期です。
絵画工作においてもできることや楽しめる内容は、どんどん変化していきます。
この時期の子どもに共通して言えることは、絵画工作は大人とのコミュニケーションのツールであることです。
作ることを通してポジティブな言葉をかけ、制作活動のやる気を培いましょう!
ここでは0歳~2歳の絵画工作のポイントと活動と、オススメの活動について紹介します。
握ることから始める
まずはいろいろな素材を使い、触って握ることから始めましょう
水や粘土、紙、絵の具など好きな感触と不快な感触があることに気づきます。
そして、クレヨンを握ることができるようになると画用紙に無秩序にぐるぐると、線を描き始めるお絵描きの活動ができるようになります。
指先を使う
「物をつかむ」「移動させる」などの基本的な動作を通じて、手や指のトレーニングを行います。
そして、指先の動きが上手になると、シールを貼る作業ができるようになります。
ぺたぺたするシールの糊部分の感触が好きな子どもも多いので、シールを使ったアート活動は取り入れやすくておすすめです。
初めてのアート体験!0歳~2歳にオススメのアート活動例
ここではこの時期のお子様にオススメのアート活動の例を紹介します。
手や足でのペインティング
絵の具やスタンプを手足にペインティングし、インクの感触を楽しみます。手足についた絵の具は画用紙にスタンプすることで思い出の作品として残すこともできることからこの時期によく取り入れられるアートです。
無秩序な塗り絵
この時期の塗り絵はクレヨンを使った点打ちや、ぐるぐる描きなどでOKです!
クレヨンを握り絵を描く感覚を楽しみます。
この時にクレヨンはなるべく柔らかく、しっかりと色のつくものを選ぶことがオススメです。
【3歳~4歳】アートを通して自己表現をする
3歳~4歳の子どもたちは、一段と成長し自己表現や想像力が豊かになる時期で
アート活動にも意欲的になり、意味を持つ形を描いたり作ったりするようになります。
また、この意欲的な時期にさまざまな材料でのアートや技術を経験することで子どもたちの更なる制作意欲の向上や、想像力を育むことに繋がります。
意味ある形の描画
絵画工作を通じて基本的な形や顔、シンボルとなる形を描くようになります。
また、自分自身や友達、家族など身近な人物を描くことが多いのも特徴の1つです。
リアルな体験をアートに織り交ぜ、自分たちの感じたことや学んだことを視覚的に表現することも可能です。
アートとコミュニケーション
3歳〜4歳は人との関わりがアートの中で豊かに表現される時期です。
この年齢の子どもたちは、自分たちの作品のフィードバックを通じて、自分自身をより深く理解し始めます。
描いた絵や作った工作の作品を親や友達と共有し、他の人からのフィードバックや反応を楽しみます。
たくさんポジティブな言葉で肯定してあげる時が、制作意欲や成長に繋がります。
どんな活動が最適?オススメの絵画工作メニュー
この時期の子どもに是非取り組んでもらいたいテーマを選びました。
少しずつ取り組む内容の難しさをUPさせたり、材料を工夫するなど子どもの興味を惹く活動がおすすめです。
テーマを設定したシンプルな描画
なにを描けば良いかがわからないといった子がまだ多い時期です。
子どもにとって身近な存在の家族や友達をテーマに設定することでイメージがしやすく、抵抗なく取り組むことができます。
身近な素材を使った工作
紙皿や牛乳パックなどのお家で手軽に手に入れることのできる材料を使って作る工作は、材料の手軽さから思うがままに切ったり貼ったり自己表現を楽しむことができます。
また作品は子どもにとって愛着が湧くものともなります。
【5歳~6歳】現実と空想の交差点
5歳~6歳の時期は、想像力が豊かになり自分の感情や考えを表現する能力が増してきます。
アート活動においても、自己表現と創造性が発展し作品に個性が現れます。
想像力あふれるアート作品
5歳~6歳の子どもは意味ある形の描画が一層発展し、具体的な表現が増えます。
身の回りの人だけでなく、ペット、家、自然など、身の回りのものを描きます。また絵には自分たちが日々経験している環境や感情を反映する場合が多いです。
空想の表現
5歳〜6歳の子どもたちは、絵画工作を通じて、現実世界だけでなく空想の表現も楽しみます。
自らの想像力を活かして、ファンタジーな場所や生き物を生み出し、紙現実の世界と混ぜた絵として表現します。
絵画工作アイデア!アートを通してコミュニケーションを取る
この時期には子ども自ら取り組みたい課題やテーマの意見を伝えてくれる場合もあります。
子どもの意見も摂り入れながら、アート活動の中に新しい学びを提供してください。
紙芝居や絵本作り
空想の世界を表現できるようになったこの時期には、アートを通して物語を作る活動がオススメです。
描いた絵を言葉にして伝える経験を積むことで、言語化能力や考える力が豊かになります。
共同制作
この時期には周りの友達と協力してアート作品を作り上げることが可能になります。
作品の完成イメージを共通して取り組む過程では、コミュニケーション能力の工場や協調性が養われます。
また1人で作る作品とは違い、ダイナミックな作品となるので達成感や自信を感じることができるでしょう。
【7歳~8歳】技術とスキルの発展
自分のアイデアを表現するのに多くの方法を探求し、アートを通じて感情や考えを伝えることができるようになります。
またこの時期から、作品の完成をイメージしてから計画的に製作をするようになるのも特徴の1つです。
技術の向上
この年代では、色や細部への表現力が一段と向上します。
- 色の混ぜ合わせ:
基本的な色を組み合わせて新しい色を作り出し、雰囲気や感情を色で表現できるようになります。 - 細かい描写の充実:
人物の表情や服装、背景の小物など、細部にこだわる描写が増え、物語性やメッセージ性のある作品を作れるようになります。
こうした技術の向上は、子どもたちの自己表現の幅をさらに広げるとともに、自信を深めるきっかけにもなります。
試していきたい!アート活動
複雑な製作も少しずつチャレンジして、可能性を広げて行きたいですね!
モザイクアート
完成のイメージを持ちながら取り組む必要があるモザイクアートは、計画的な思考力を育てるのに最適です。
細かいパーツを組み合わせる工程を通じて集中力が養われ、達成感も得られます。複雑なテーマに挑戦することで、表現力や忍耐力も向上します。
立体アート
この時期には表現の幅がさらに広がり、立体的な作品にも挑戦できます。
プラスチック製のプラモデル
手先の器用さを活かして、より高度な立体作品に挑戦することで、自分のアイデアを具体化する力を育みます。
ペーパークラフト
紙飛行機や動物、建物など、さまざまなテーマで簡単な立体物を作成。
【9歳~10歳】個性とスタイルの発展
9歳~10歳ごろの子どもは自己表現、技術的なスキルがさらに向上します。
今までの経験を応用し作品に活かしたり、自分のスタイルを確立し絵画や工作の作品を作るようになります。
ここではそんな、9歳~10歳ごろの子どもの絵画工作の発達の特徴や、さらに可能性を伸ばすためにできるアート活動について紹介します。
個性の発見
完成した作品に対して自分で改善点やうまくいった点を考えて、次回以降に反映する工夫や応用力が上がります。
これによって自分のアートスタイルができ、統一されたタッチの絵を描くようになります。
リアルな表現
より複雑で詳細な描写をするようになります。
また、作品をより正確に反映し始め、特定の人物を描く際には特徴や表情も表現するようになります。
アートの幅を広げるアイデア
9歳~10歳の子どもたちは、「工作」から「美術」へと移行する準備段階にあります。
この時期に適したアート活動を通じて、知識や技術をさらに高め、創造性を一層深めることが可能です。以下に、ぜひ挑戦してもらいたいアート活動をまとめました。
アート×科学
アートに実験的な要素を取り入れることで、科学の原理を学び、創造力を刺激することができます。
- おすすめ活動例:
- スライム作り: 科学の仕組みを学びつつ、色やテクスチャをカスタマイズして個性を表現。
- 光と影のアート: 光源を使った影絵や、プリズムを使った色彩アートなど、科学的な視点を取り入れた作品作り。
こうした活動は、アートだけでなく科学への興味をも広げるきっかけとなります。
スケッチブックの使用
技術面での発達が進むこの時期には、スケッチにチャレンジすることが非常に効果的です。
具体的な取り組み
黒鉛筆を使ったスケッチ
単色で陰影や質感を描く練習は、観察力を高め、美術の基礎力を養います。
日常の観察記録
身近な物をスケッチし、構図やディテールの描き方を学ぶことで、高学年でのデッサン学習へのスムーズな移行が可能になります。
スケッチブックは、自分の成長や変化を記録できる宝物にもなるでしょう。
【発達障害】自分を表現するためのアート
発達障害を持つ子どもたちにとって、絵画工作などのアートは自己表現の手段であり、感情をコントロールや、コミュニケーションのトレーニングとしても取り入れることができます。
また、アート活動はお子様の自己肯定感を高め、ものづくりをする楽しさを生み出します。
ここでは、発達障害を持つ子どもにオススメのアートの取り入れ方をまとめました。
自由な表現を認める
発達障害には自閉症やADHDなど様々な種類があります。
その特性や子どもたちそれぞれが持つ、個性に合わせたテーマ選定が非常に大切です。
設定したテーマから逸れていても指摘せずに作品を認めましょう。
安心と安全が確保できる空間で楽しむ
ものが多い空間や初めての場所に大きなストレスを感じる場合があります。
大きなストレスがかかった状態でのアート活動は、効果を十分に得られないだけではなくアートそのものを苦手と感じてしまう場合があるので気をつける必要があります。
もし、分離不安が発生した場合は活動に慣れるまでお家の方と一緒にアートを楽しむこともおすすめです。
アートを通したコミュニケーションを楽しむ
自分の気持ちをうまく話せない子どもや、感情をコントロールできない子どもにとってアートは形や色で気持ちを表現できるツールになります。
作品を作るに至ったストーリーを共有することで、アートを通して感情や気持ちを周りの人に伝えることができます。
また作品についての話をする時間が、コミュニケーションのトレーニングにもなるでしょう。
【不登校】アートを通した自己肯定感の回復
アートは、不登校の子どもたちにとって、感情を整理し、ストレスを軽減するための大切な手段です。
また、自己肯定感を高め、自分自身と向き合う機会を与えてくれるツールとしても効果的です。ここでは、不登校の状態にある子どもたちにおすすめのアートの取り入れ方を紹介します。
自己探究のサポートとして取り入れる
不登校の子どもたちにとって、絵画や工作は単なる創作活動を超えた意義を持ちます。
特に、自己探究のサポートとして取り入れることで、自分自身を理解し、表現する手段を得ることができます。
また、作品を通して親やサポートを行う大人とのコミュニケーションの材料ともなり、子どもたちの内面に寄り添う手がかりを得ることができます。
具体例
- 自分が今感じていることを「色」や「形」で自由に表現する。
- 作品に込めた思いや背景を話し合い、コミュニケーションを深める。
リラックスできるテーマの活動をする
不登校の子どもたちにとって、心が安らぎ、安心できる環境でのアート活動が最優先です。
取り組み方
- 自分の好きな動物や夢中になっているアニメキャラクターを描く。
- 自分の部屋や「落ち着ける場所」をテーマにした工作をする。
こうした活動は、子どもたちが心の中の不安を和らげ、自然な形で自己表現を楽しむ助けとなります。
アートは、不登校の子どもたちにとって、自分の内面と向き合う時間を与え、安心感や自己肯定感を高める手助けをします。子どものペースに寄り添いながら、アートを通じた自己表現を一緒に楽しむことで、心の回復をサポートしましょう。
まとめ|子どものアート活動と大人の役割
子どもたちのアート活動は、単なる「描く」「作る」にとどまらず、技術の向上や感情表現、想像力の育成、コミュニケーション能力の発展に大きく貢献します。
そのためには、周りの大人が子どもの特性や成長段階に合ったテーマを提供し、自由に取り組める環境を整えることが大切です。子どもたちは、アートを通じて自分自身を表現し、新しい可能性を切り開いていきます。
特に、発達障害を持つ子どもたちにとって、アートは自己表現や感情整理の重要な手段となることがあります。次回の連載では、「発達障害の子どもたちとアート」をテーマに、子どもの特性に寄り添ったアート活動の取り入れ方や、支援の具体例を詳しくご紹介します。